九州から楢葉町までの放射線量の変化と関係


表1.九州から福島への旅の最中に測定した放射線量の結果


表2.日常生活で被爆する放射線量


グラフ1.表1と表2の関係をグラフ化したもの





目的

 九州から福島へ行くまでの過程で放射線量がどのように変化するのか確かめ、福島の禁止区域が解除されている地区の放射線量がどのくらい危険なのか調べる。

道具と測定方法

 今回の計測で用いたガイガーカウンターはエステーのエアカウンターSである。これは民間用のガイガーカウンターで、空気中のγ(ガンマ)線のみ測ることができる。数万円から数十万円払えばかなり性能の良いガイガーカウンターが買えるようだが、私には高価すぎるので安い物を使った。
 安いとは言え、福島の一般の方が使っている物もこれと同じ、もしくは同等の商品である。高価なガイガーカウンターを使えば漫画のコッペリオンのように放射性物質の種類まで特定できるようだが、そういうのを使っているのは専門の業者か自衛隊くらいだ。
 測定方法は取扱説明書通りに行った。どの測定地点でも地面から一メートル離し、水平に構えて測定している。また、測定ミスや誤差が出ているのかもしれないので、可能な限り複数回測定し、平均値を求めた。人によっては平均値でなく、複数回測定し、その中で一番低い値を測定結果として発表している人もいる。
 使用したカウンターは表示される数値に限度があるため、一番低い値は0.05μSv/hだ。
 また、平均値を元に一年間に留まる放射線量を算出した。これは、平均値(μSv/h)×24(時間)×365(日)×0.001の式で出している。こうすることでその場所に留まる年間の放射線量をmSvで表すことが出来る。
 グラフ1は表1と表2を元に作成した。
 横軸が、測定した地点に一年間留まると仮定した結果(mSv/年)、縦軸が測定した地点の名称である。


測定結果


 表1からわかる通り、九州から東京までは年間の放射線量が1mSvを超えることがない。ネットでは九州まで放射性物質が拡大していると話題になって、ど田舎や島にまで避難した人がいるが、この数値を見る限り日本の半分はかなり安全であることがわかる。心配しなくとも、スーパーで販売されている米を食っても放射性物質の影響を受けることはない。離島にまで避難した人は戻ってきても大丈夫だ。
 さて、問題の福島だが、やはり他の地域より数値は高い。表1より、人が徐々に戻りつつある広野町は2.28mSv/年でお隣の久之浜は1.63mSv/年だ。テレビで良く聞くいわき市は0.70mSv/年である。
 いわき市は観光の目玉がたくさんある町だが、福岡では「いわき市に行く」と言っただけでも苦い顔をされる。しかし測定結果を見る限り、九州といわき市はほとんど同じ数値であることがわかる。表には記されていないが、福岡は基本的に0.44mSv/年だ(一般的に小倉と福岡は一緒くたにされる)。一体どこにいわき市に行くというだけで苦い顔をされる要因があるのか、数値を見れば明らかだ。
 次に広野町と久之浜、この二つの町は比較的警戒禁止区域に近い。測定結果にもそれが反映されているため、これだけ見ると一見危険な地域に勘違いされそうだが、表2を見ていただきたい。世界の一人当たりの自然界から受ける放射線量は2.4mSv/年。広野町と久之浜の数値が高いとは言え、ほとんど世界基準と同じ数値だ。世界中の人が毎日放射線でバッタバッタと倒れていない今、世界基準とほとんど同じ数値という結果は、危険ではない証明と言えないだろうか。
 久之浜には受け入れ先のない震災瓦礫が、海岸にたくさんある。ほんとにたくさんだ。それは空中からビデオカメラを回して、やっと撮影しきる量だ。福岡は震災瓦礫の受け入れを頑なに拒否し続けている。もちろん福岡の住民を守るため、懸命な決断だと思う。ただ残念なことに、福岡の人間は放射線量に関心がない。関心がないとは、勉強をしていないということだ。
 久之浜の放射線量は1.63mSv/年だ。日本の自然界から受ける放射線量は年間1.5mSv。久之浜の放射線量は日本の基準と変わらない。
 久之浜の震災瓦礫はビニールシートで覆われ、これ以上放射性物質が付着しないように厳重に管理されている。
 瓦礫を受け入れたからといって、奇形児が生まれたり、子どもが甲状腺がんになる可能性は極めて少ないだろう。
 私も瓦礫受け入れは消極的だったが、この結果を見て改めて考えさせられた。
 これまでは「被災地の人が可哀想じゃないのか!!」といった感情のもと瓦礫受け入れが議論されていたが、これからは福岡でも数値を元に議論する必要がある。
 グラフ1で存在感を放っているのが、楢葉町の放射線量だ。この町は2012810日に警戒禁止区域が解除された。現在も除染活動が続いている町だ。言い換えれば、やっと人が入ってきれいにできるようになった地区だ。復興に向けて、日夜様々な人が頑張っている。私は偶然にもここに入ることが出来た。測定回数は車内で一回、車外で一回。時間の都合で複数回測定することが出来なかった。
 表1にもある通り、楢葉町の放射線量を年間に換算すると11mSvだ。ブラジルのガラパリという場所が世界でも有名な自然放射線量が多い土地のため、よく比較対象として用いられる。楢葉町の放射線量はガラパリと同等かそれ以上だ。人が住めないとは言わないが、決して安心して暮らせる場所ではないだろう。私が行ったときはまだ人が住める状態ではなく、住民の人でも時間制限付きでしか町内にいられなかった。
 が、はやまってはいけない。これは私が測定したときの放射線量の結果を一年間に換算した数値だ。警戒禁止区域が解除されたことで除染業者が中に入れるようになった。今後除染していけば放射線量を減らしていくことが可能だ(広野町もそうやって復興している)。
 ネットで様々な憶測が飛び交って、警戒禁止区域が解除された地区でもほんとは人が住めないくらい汚染されているとか、政府が放射線量を誤魔化して発表しているという考察が一人歩きしている。今回私が自分の足で調べた結果、警戒禁止区域が解除され、除染が進んでいる町では人が生活していくのに大きな支障がないことがわかった。
 ちなみに漫画なんかで放射性物質が原因で即死する描写があるが、人間にとっての致死量は10,000mSvを一度に受けたときである。ガンになると言われている放射線量は100mSvから200mSvの量を一度に受けた時。広野町や久之浜の数値がどれだけ低いか、おわかりいただけただろうか。
 今後は食品の放射線量が問題の中心になるだろうから、できれば私も直に調べにいきたいが、如何せん食品専用のガイガーカウンターは貧乏な私にはちょっと高価故に頓挫している。γ線以外の放射性物質を測定できるガイガーカウンターを持って富岡町にもぜひ足を運びたい。


 なお、この記事を書くにあたって財団法人放射線影響協会安全安心科学アカデミーGizmode Japanを参考にしている。

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