2012年11月8日木曜日

2012年8月11日 東京で眠りについた


 東京の友人宅に戻ると、テーブルの上に夕食が用意してあった。
「おかえり」
「雨に濡れたわ」
「あー、そういえば降ったね」
「後、東京は人が多すぎ。コミケがあったのかな? 駅、それっぽい人がいたよ」
「だろうよ」
 友人は福島での出来事を深く聞くわけでもなく、黙々と家事を続けていた。
「風呂入れよ。向こうで満足に入ってないだろ」
「いんや、二日とも良か風呂やったばい」
「じゃあ、風呂貸さねえ」
 私と友人は笑った。
 彼は洗濯機も貸してくれ、酒も用意してくれた。
 彼がいなければ間違いなく、旅は成立しなかっただろう。
 洗濯機が回っている間、私と友人は録画していたアニメを見ながら晩ご飯を食べた。
「こうやって、誰かと酒飲むの久しぶりだな」
「そうなの? こっちはいわきの居酒屋で日本酒いただいたけど」
「向こうはどうなの?」
 私はちょっと考えて、「普通かな」と答えた。
「危険な所もあれば、危険じゃない所もある」
「そうか」
「うん、そう」
「まあ、お前が無事ならそれで良かったよ」
「ありがとう」
 結局、彼と福島について話したのはこれだけだった。
 彼は料理がうまいから、福島の野菜を使って楢葉町役場の人達に弁当を届ける事業を二人でやったらどうだろうとか妄想をしながら私は梅酒を飲んだ。
「明日福岡に帰るんだろ?」
「うん」
「俺が仕事から帰ってきても、まだここにいるなよ」
「寝転がって、漫画読んでるかもよ」
 友人は梅酒を飲んだ後、ベッドに横になった。
「明日も仕事だから寝るわ」
 私も横になって、電気を消した。
 明日の朝、少なくとも地震で目を覚ますことはないだろう。

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